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新規性喪失の例外の適用の手続き [意匠法の実務(Design Patent)]

(意匠の新規性の喪失の例外)

第四条  意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2  意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3  前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。


【メモ】

・第4条第3項に関しては、H18改正により、「14日以内」が「30日以内」に変更された。出願前に意匠を公開するケースが増加しており、第三者からの証明書面を取得するのに時間がかかることを考慮したもの。

・公開された意匠と類似する意匠に関しても、新規性喪失の例外の適用により意匠登録を受けることができる(1項、2項)。

・以下の、意匠審査便覧の記載は実務の上で重要。

<10 出願諸手続>
10.30 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるために必要な要件
10.30.01 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として内外国特許公報等が提出された場合の取扱い
10.31 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための手続
10.32 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」についての取扱い
10.33 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として、出願人自らが作成した証明書等が提出された場合の取扱い
10.34 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための、「公開者」が「意匠登録を受ける権利を有する者」であることの証明
10.35 意匠登録を受ける権利を有する者が公知にした場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実
10.36 意匠登録を受ける権利を有する者が刊行物に記載した場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実
10.37 意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間になされた公開行為についての取扱い


・一部重要な点を以下に引用する。先日O先生の講義で習ったが、10.33は特に実質的な期間延長を可能とするものであり、大変に役立つ。(O先生、ありがとうございました。)


・審査便覧 10.31
意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための手続

意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるためには次の手続がなされていなければならない。

1.その旨を記載した書面が意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されているか(意4条3項) 、あるいは願書にその旨が記載されていなければならない(意施19条2項[準]特施27条の4)。
なお、電子情報処理組織を使用して手続を行う場合には、その旨を記載した書面の提出に代えて、当該意匠登録出願の願書に「【特記事項】」の欄を設けて「意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願」と記載しなければならない。(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則12条)

2.その意匠登録出願の日から30日以内に、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠が意匠法第4条第2項の規定の適用を受けることができる意匠であることを「証明する書面」が提出されていなければならない(意4条3項)。
なお、「証明する書面」を提出するときは、意匠法施行規則様式第1に規定された「新規性の喪失の例外証明書提出書」を添付しなければならない(意施1条)。

1又は2のいずれかがなされていない場合には、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けることができない。


・10.32
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」についての取扱い

 いわゆる「証明書」に限らず、それ以外の「書面による証拠」も「証明する書面」として取り扱うこととする。
(説明)
 一般に「証明書」とは、ある事実の存否について確信を抱かせる挙証をいうものであるが意匠法第4条第3項の「証明する書面」については、その内容、形式共に他に何ら法定されていない。そのため、提出されてくる「証明する書面」の内容、形式は種々多様に亘ることが想定される。
 そこで、ここにいう「証明する書面」には、いわゆる「証明書」は勿論その他刊行物等の書面による証拠を含んで解するものとする。


・10.33
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として、出願人自らが作成した証書等が提出された場合の取扱い

 出願人自らが作成したいわゆる証明書(自らが証明者として署名したもの)(注)のみが提出された意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠については、同規定の適用を認めず審査を進める。
 ただし、「証明する書面」を補充することができるものとする。

(説明)
 意匠法第4条第3項の「証明する書面」として提出されたものであっても出願人自らが公開事実を証明する書面は、その事実の存在を客観的に判断し確信を抱かせる根拠としては十分なものとは言い難いものであるから、同条第3項にいう「証明する書面」として扱わないものとする。いわゆる「証明書」による場合は、本人以外の者の証明を必要とする。
 しかし、同法第4条第2項の規定において例外事由とされる公開行為は多岐にわたり、出願人が短期間に立証することに困難を伴うものがあると考えられるから、出願人自らが公開事実を証明する書面のみが提出されている場合には、「証明する書面」の範囲内で、その公開事実の存在につき心証を得ることのできる資料を補充する機会を与えることとした。
(注)宜誓書の形式のものも含む。

参考判決:東京高裁平成4年(ラ)第19号「自動車用ホイール」 判決日平成4年9月8日
 「意匠が右条項(意4条2項)に規定する意匠であることを、意匠登録出願人自身が作成した書面のみで認定することは、一般には客観性が担保されないため相当ではないが、だからといって、右事項が第三者の作成した書面のみによって直接的に証明されなければならないと解するのは相当でなく、意匠登録出願人自身が作成した書面が提出されている場合には、これと第三者が作成した書面を総合的に判断して、右事項が肯認し得る程度に証明されていれば足りるものと解するのが相当である。」


・10.34
意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための、「公開者」が「意匠登録を受ける権利を有する者」であることの証明

 (1)意匠の創作者、公開者及び出願人のうち、公開者のみが相違する場合、(2)前記三者の全てが相違する場合,(3) 意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合若しくは公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合であっても、意匠法3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一でない場合又は同一性を有していない場合には、公開時において公開者が「意匠登録を受ける権利」の正当な承継人であること、若しくはその公開行為が承継人の意志・意向指示等に基づく行為であることが「証明する書面」(意4条3項)によって証明されていなければならない。

(説明)
 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠にあっては「意匠登録を受ける権利を有する者が自ら公開行為をし、その者が意匠登録出願をする」こともその要件の一部である以上、公開者が公開時に、出願人が出願時にそれぞれ意匠登録を受ける権利を有する者であることが「証明する書面」によって証明されていなければならないものである。

 ところで、一般の意匠登録出願にあっては、出願人に対し、意匠登録を受ける正当な権利を有する者であることを、必ずしも証明させていない。これは、創作者及び出願人の名称を願書面に記載することを義務づけていることから、出願人は意匠登録を受ける正当な権利者であろうと推定した結果によるものであり、この推定を左右するような事情が生じた場合には、当然に両者の関係を証明させる必要がある(意施19条1項[準]特施5条)。

 また、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について上記事情を考慮すると、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一又は同一性を有している場合には、意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合は勿論、公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合も、公開者が意匠登録を受ける正当な権利者であろうと推定することに不合理はない。

 しかし、(1)意匠の創作者、公開者及び出願人のうち、公開者のみが相違する場合、(2)前記三者の全てが相違する場合、(3)意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合若しくは公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合であっても、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一でない場合又は同一性を有していない場合には、上記推定の働く余地は少ない。

 したがって、この場合に限って本文のように取り扱うこととする。


【日誌】

本日、「N」の懇親会へ。特にMさん(主役)、Kさんに会えるのが楽しみ。また、久しくお会いできていない方々にお会いできるのも楽しみにしています。

椿特許事務所
弁理士TY
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