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意匠・新規性喪失(公知)を証明するための事実 [意匠法の実務(Design Patent)]

審査便覧10.35

意匠登録を受ける権利を有する者が公知にした場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実

実施等により公知になった意匠について下記の事実が意匠登録出願の日から30日以内に提出された「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要がある。

なお、意匠が公知になる態様は、意匠の実施、即ち意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をすることの外、意匠を記載した図面、意匠を現わした写真、若しくはひな形等の展示又はテレビジョン放送による放映等多様であるため、下記には代表例のみを示す。


1.展示(展示会・見本市・博覧会・新製品ショウ・その他)の場合
① 展示会名
② 主催者名
③ 開催日
④ 開催場所
⑤ 出品者名(公開者名)(→10.34)
⑥ 出品(発表)されたもの

2.販売の場合
① 販売日
② 販売場所
③ 販売者名(→10.34)
④ 販売されたもの

3.映像による場合
(1)テレビジョン放送による放映
① 放映番組又は広告名
② 放映者
③ 放映日
④ 放送局
⑤ 発表者名(→10.34)
⑥ 放映されたもの
(2)その他の映像
(1)に準ずる。

4.インターネットによる場合

①「証明する書面」に記載された意匠のインターネット上での公開が、公開時にその意匠について「意匠登録を受ける権利を有する者」の行為に起因した事実

②「証明する書面」に記載された意匠が公衆に利用可能な意匠である事実

③「証明する書面」に記載された意匠が掲載されているホームページの存在の事実
例えば、当該ホームページのトップページのアドレス及び当該ページの印刷物等。この場合の「アドレス」とは、URL(Uniform Resource Locator の略)という表記方法で表記された、インターネットのサービスの所在地を指す。一般にhttp://www.xxx.or.jpのように表記される。

④「証明する書面」に記載された意匠が掲載されているページの存在の事実(注1)
例えば、当該ページのアドレス及び当該ページの印刷物等。

⑤「証明する書面」に記載された意匠の掲載日時(注2)(当該意匠に公衆がアクセス可能となった日時)
例えば、当該意匠の掲載日時が表示された当該ページの印刷物等。
なお、出願人は、その情報に関して掲載、保全等に権限又は責任を有する者による証明書類等についても「証明する書面」として提出することが望ましい。

(注1) インターネットにのせられた意匠は、不特定の者がアクセス可能な意匠であり、頒布された刊行物に記載された意匠と同様の情報伝播力を有するので、通常、公衆に利用可能な意匠である。ホームページへのアクセスにパスワードが必要であったり、アクセスが有料である場合でも、その意匠がインターネットにのせられており、その意匠の存在及び存在場所を公衆が知ることができ、かつ不特定の者がアクセス可能であれば、公衆に利用可能な意匠である。

(1)公衆に利用可能な意匠であるものの例
① 「サーチ(検索)エンジン」(インターネット上で目的とするサイトを探すためにデータベース的な役割を果たすサイト)に登録されており検索可能であるもの又はその意匠の存在及び存在場所を公衆が知ることができる状態にあるもの(例えば、関連ある学術団体やニュース等からリンクされているもの又はアドレスが新聞や雑誌等の公衆への情
報伝達手段にのっているもの)

② パスワードが必要なものにおいては、パスワードを入手することのみで不特定の者がアクセス可能であるもの(この場合には、パスワードを手に入れることが有料かどうかは問わず、誰でも何らかの手続を踏むことで差別無くパスワードを手に入れてアクセスできるようになるホームページであれば公衆に利用可能な意匠である。)

③ 有料のホームページにおいては、料金を支払うことのみで不特定の者がアクセス可能であるもの(この場合には、誰でも料金を支払うことのみで差別無くアクセスできるようになるホームページであれば公衆に利用可能な意匠である。)

(2)公衆に利用可能な意匠とは言い難いものの例
インターネットにのせられていても、次に該当するものは公衆に利用可能な意匠とは言い難い。

① インターネットにのせられているが、アドレスが公開されていないために、偶然を除いてはアクセスできないもの

② 意匠にアクセス可能な者が、特定の団体・企業の構成員等に制限されており、かつ、当該意匠が部外秘の扱いとなっているもの(例えば、社員のみが利用可能な社内システム等)

③ 意匠の内容に通常解読できない暗号化がされているもの(有料、無料を問わず、何らかの手段により誰でも暗号解読のためのツールを入手できる場合を除く。)

④ 公衆がその意匠を見るのに充分なだけの間公開されていない場合(例えば、短時間だけインターネット上で公開されたもの)

(注2)インターネットにのせられた意匠は改変が容易であることから、「証明する書面」に記載された意匠が当該ページに表示されている掲載日時にその内容のとおりに掲載されていたかどうかが常に問われる。その事実について肯認し得る程度に証明(参考判決参照)されていない場合には、その公開意匠について意4条2項の規定の適用は認めない。
なお、その場合に、出願人は「証明する書面」の範囲内で、その事実の存在につき心証を得ることのできる資料を補充することができ(同様な運用として意匠審査便覧10.33 参照)、それによって先の事実が肯認し得る程度に証明された場合には、その公開意匠について意4条2項の規定の適用を受けることができる。

参考判決:東京高裁平成4年(ラ)第19号「自動車用ホイール」
「意匠が右条項(意4条2項)に規定する意匠であることを、意匠登録出願人自身が作成した書面のみで認定することは、一般には客観性が担保されないため相当ではないが、だからといって、右事項が第三者の作成した書面のみによって直接的に証明されなければならないと解するのは相当でなく、意匠登録出願人自身が作成した書面が提出されている場合には、これと第三者が作成した書面を総合的に判断して、右事項が肯認し得る程度に証明されていれば足りるものと解するのが相当である。」

(説明)
意匠法第4条第2項の規定の適用を認めるには、10.30に掲げた要件の全てが証明されていなければならない。そして、意匠法第4条第3項の規定によると、出願人に対し、意匠登録出願の日から30日以内に「証明する書面」を提出する義務を課し、これにより上記要件を証明させることとしている。しかし、この要件の中には、例えば「意匠登録出願に係る意匠と公開された意匠との同一性の判断」のような審査官の実体的判断に任されている部分もあり、又意匠の創作の時点から公知に至る迄には出願人にとって短期間のうちに証明することが困難であろうと思われる部分もある。そこで、前記要件について「事実である」と審査官が判断するために最小限必要であり、かつ出願人にとっても短期間に立証することが可能であろう事実については、出願人が「証明する書面」によって明示すると共に証明する必要があることとした。

上記事実が「証明する書面」によって証明されれば、その事実に基づいて審査官が実体的判断をすることによって10.30に掲げた要件について事実認定の判断が可能となるものである。


【日誌】

弁理士F先生に、なんば宗右衛門町のEという店でご馳走になる。F先生にお会いするのはしばらくぶりなのですが、髪が短くなり、髭もメガネもなくなっており、最初、別人かと思いました(niceイメチェンです)。

Mさん、Kさんと、なんば神座(かむくら)道頓堀店のカウンターに並んでラーメンを食べる。金龍ラーメンによく行くのだが、神座も素晴らしい(ラーメンは、醤油味のもつ鍋のスープに若干似たスープか?と思う)。
その日、道頓堀に「くいだおれ太郎」はいなかった。

椿特許事務所
弁理士TY
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