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韓国の審査猶予申請制度 [韓国知財実務(KR practices)]

■韓国の審査猶予申請制度

1.制度の概要

・審査の猶予(遅い審査)を請求する制度(他に、早期審査、通常審査がある(3TRACK))

・審査猶予希望時期を記載した審査猶予申請書を出願審査請求日から6ヶ月以内に提出する(願書や審査請求書にその旨を記載して同時提出も可)。

・審査猶予希望時期は、審査請求日より18ヶ月以後及び出願日より5年以内で指定可能である。

・審査猶予申請をした場合、審査猶予期間経過後3ヶ月以内に1回目の局指令が得られる。

・分割出願及び変更出願、申請の前に既に拒絶理由または特許決定書が通知された出願は審査猶予申請できない。

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(韓国特許庁HPより)
Deferred Examination
If necessary, Applicants can have the examination deferred for up to six months from the date of the examination request.

Instead of specifying a preferred date, applicants can get first action from KIPO within three months of the preferred examination date provided the preferred date is at least 18 months after the date of the examination request and within five years of the application date.
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2. 制度のメリットについての検討

 韓国の審査請求期限は出願日から5年である。このため、

① 審査請求期限よりも十分に早い時期に審査請求をして、出願日より5年(最長の猶予期間)を指定して審査猶予申請した場合と、

② 審査猶予申請制度を利用せず、出願日から5年(審査請求期限)ギリギリに審査請求をした場合と
では、1回目の局指令が発行される時期の差は小さく、メリットは少ないかもしれない。

 むしろ、②審査猶予申請制度を利用せず、審査請求を出願日から5年ギリギリにした場合の方が、1回目の局指令が発行される時期は遅いかもしれない。
 なぜならば、①早めに審査請求をして、出願日より5年を指定して審査猶予申請すると、1回目の局指令は出願日から5年~5年3ヶ月の間に発行される。(審査猶予制度では、猶予期間経過後3ヶ月以内に1回目の局指令が発行されるため)

 一方、②審査請求を出願日から5年ギリギリにすると、1回目の局指令は出願日から6年くらいの時期に発行されると推測される(審査請求から1回目の局指令までが1年くらいかかるという仮定で)。

 しかし、この制度を「出願人の望む時期に1回目のOAを発行してもらうための制度」と理解すると、メリットがあるものと思われる。
 たとえば、出願について審査請求をすることが決定しており、かつ出願人の事業的な理由により、出願日から3年後くらいに1回目の局指令を受け取りたいと出願人が望んでいる場合では、単純に審査請求を3年後に行っても、1回目の局指令はいつ発行されるか分からず、4年後、5年後に発行がずれ込むかもしれない。
 しかし、審査猶予申請を行い、猶予期間を出願日から3年と設定すれば、出願人の望む時期付近、すなわち出願日から3年~3年3ヶ月に1回目の局指令を受け取ることができるだろう。
 また、韓国特許庁側でも、早期審査出願・通常審査出願・審査猶予出願と区別することで、出願に関する審査の緊急度が把握できる。その結果、審査請求がされた順番に審査を行う場合に比べて、重要出願の早期権利化を一層図ることができるというメリットがあるものと推測される。


韓国特許庁
http://www.kipo.go.kr/kpo/eng/
韓洋国際特許事務所の制度説明
http://www.hanyanglaw.com/jap/news/newsletter_preview.asp?curPage=1&ca=96#389
金・張法律事務所の制度説明
http://www.ip.kimchang.com/USR_main.asp??=IP/NEWS/I_NEWS/view&bbs_no=522&page=1&lang_cd=jp


椿特許事務所
弁理士IT

韓国:新規性喪失の例外メモ [韓国知財実務(KR practices)]

・韓国特許(新規性喪失の例外)

新規性喪失の例外が適用可能な期限:6ヶ月
(2008年改正案で、1年になるとの予定があったが、米国とのFTA交渉の経緯により、現時点では6ヶ月である点に注意。)

販売行為などによる場合でも適用を受けることができる可能性がある。
(これにより、日本では新規性喪失の例外の規定の適用を受けることができない場合でも、韓国で特許を受けることができる可能性がある。)

パリルート出願、ダイレクト出願などを行う場合、当初から韓国語による明細書を準備しなければいけないので、翻訳期間の確保に注意すること。期限管理を十分に(6ヶ月はあっという間に過ぎてしまう)。・・・というよりも、新規性喪失前に、(日本などでの)出願を完了するよう徹底すること。


椿特許事務所
弁理士TY

韓国商標法(模倣商標の登録阻止など) [韓国知財実務(KR practices)]

鍾和特許法律事務所(韓國)の弁理士、朴鍾和先生にお越し頂き、韓国の知財実務についてご講義頂きました。日本弁理士IM先生にも出席して頂きました。天候の悪い中、ありがとうございました。大変に貴重な講義でした。

2007年7月1日から施行される韓国商標法の改正として、朴鍾和先生には以下の項目をご教示頂きました。
(1)保護範囲の拡大(ホログラムや、いわゆる動的意匠が保護されるようになった)
(2)模倣商標の登録阻止の強化(「韓国内または外国の需要者の間に特定人の商品を表示するものと認識されている商標と同一または類似の商標であって、不当な利益を得ようとし、またはその特定人に損害を加えようとする等、不正な目的を持って使用する商標」が不登録要件となった)
(3)異議申立期間が30日から2月になった(30日以内に理由補充が可)
(4)先使用による使用権が認められるようになった(不正競争の目的がなく出願前から使用していること、使用の結果、特定人の商品を表示するものと認識されていること、が要件)
(5)不使用による取消審判請求人の独占出願の期間が3月から6月になった

朴鍾和先生は、その日の日経新聞朝刊で、名古屋のみそかつ老舗「矢場とん(YABATON)」の事件(下記(注)参照)について読まれており、日本にとって興味深いお話をして頂きました(上記(2)の改正についてなど)。私の感覚では、どれだけよい代理人(信頼して仕事を行なえる代理人)を見つけられるか、というのが最重要になるものと思います。

(注)
名古屋みそカツ老舗「矢場とん」(YABATON)の模倣店が韓国で開業し、韓国で商標登録の申請まで行なわれている、として、名古屋みそカツ老舗「矢場とん」側が、韓国の公正取引委員会に対して申し立てを行なった事件(2008年7月8日 日本経済新聞朝刊など)。

【日記】
・弊所開設から15ヵ月が経過(毎日の密度が濃いせいか、もう4~5年経ったような気がする)。心機一転で本日から望む。

椿特許事務所
弁理士TY

韓国特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway) [韓国知財実務(KR practices)]

韓国特許実務の研究
(韓国特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway))

1.特許審査ハイウェイの趣旨
A国、B国に共通して特許が申請された場合に、A国で特許可能との決定がなされれば、B国はA国の審査結果を活用して該当特許出願を他の出願に比べて迅速に審査(優先審査、早期審査)する制度。
現在日本では、米国、韓国、(英国)、(ドイツ)、(デンマーク)との間で、特許審査ハイウェイの利用が可能。
早期の権利化を図ることができる、OA発行の回数が減少するので特許取得コストが安くなる、などのメリットが多い。
第1国(例えば日本)で早期審査の請求を行なうことで、権利化までの時間は一段と早くなる。

2.韓国特許審査ハイウェイの対象となるための要件
(1)第1国特許出願(日本特許出願)を基にしたパリ条約による優先権主張を伴う特許出願が対象。日本特許出願を優先権主張の基礎とするPCT出願であって、韓国に国内移行された特許出願も対象となる。但し、日本の実用新案出願を優先権主張の基礎とする出願は対象とならない(無審査なので)。
(2)基礎となる日本特許出願に、日本特許庁が特許可能であると判断した請求項があることが要件となる。「日本特許庁が特許可能であると判断した請求項」とは以下の請求項をいう。
 (ア)特許査定が発行されている場合には特許査定された請求項、
 (イ)特許査定が発行されてない場合には、拒絶理由通知書または拒絶査定書で特許可能であると明示された請求項
(3)韓国出願での全請求項が、日本特許庁が特許可能であると判断した請求項と実質的に同一であることが必要。
 特許可能であると判断された請求項に更なる限定を含めた請求項、単純な翻訳上の差異、請求項の記載形式(独立請求項、従属請求項)による差異は、実質的に同一の範囲とされる。

3.必要な手続き
 優先審査申請に必要な証憑書類の提出が必要。以下の(1)~(4)だが、以下の理由(「証憑書類の提出を省略することができる場合」)により、ほとんどのケースにおいて(4)の提出だけでよいものと思われる。
 (1)日本特許庁が特許可能であると判断した請求項が含まれた特許請求範囲の写し、および、韓国語または英語での翻訳文
 (2)該当日本特許出願に対する日本特許庁が発行した審査関連の書面(特許査定書、拒絶理由通知書、拒絶査定書に限られる)の写し、および、韓国語または英語での翻訳文
 (3)引用文献の写し(文献が引用されていない場合には不要)
 (4)韓国特許出願の各請求項と、日本特許庁が特許可能であると判断した請求項の対応関係説明表
 対応関係説明表には、各請求項毎に実質的に同一である根拠を記載する。例えば、請求項を直訳した場合には単純に同一であるということを、単純な翻訳上の差異のみある場合にはそのような差異があっても実質的に同一であるということを表す説明を記載する。

【証憑書類の提出を省略することができる場合】
・上記(1)及び(2)の書類に関して
 韓国審査官が(1)、(2)に該当する証憑書類を入手することができる場合には、申請人は(1)、(2)の提出を省略することができる。1990年12月以降に出願された日本特許出願に対しては、日本特許庁から韓国特許庁に審査経過および関連書類の日本語原文、および英語翻訳文が提供されており、審査官はそれらを入手することができる。
・上記(3)の書類に関して
 先行技術が特許文献である場合には、原則提出不要。先行技術が非特許文献である場合には、提出を省略することができない。「いかなる場合にも先行技術の翻訳文は提出する必要がない」とされている。

4.特許審査ハイウェイ利用(優先審査申請)の特許庁料金:1件 167,000ウォン(約17,000円)

椿特許事務所
弁理士TY

韓国特許実務(PCT韓国国内移行手続き) [韓国知財実務(KR practices)]

PCT国際出願の韓国への国内移行に関しては、優先日から31か月の翻訳文提出期間が認められる。
(PCT出願の日本への移行であれば、翻訳文提出期間は30か月。但し日本の場合は30か月の後に、2か月の「翻訳文提出特例期間」が付加的に認められる。)


【以下は、韓国特許庁WEBページより引用した英文に、日文のメモを付したもの】

(2) Entry into the National Phase for the Republic of Korea (KR)

In order for an international application filed under the PCT designating the Republic of Korea ("KR") to enter into the national phase, the following documents must be submitted to KIPO within 31 months, from the priority date.

(ⅰ) an application stating the name and address of the inventor and the applicant, the date of submission, the title of the invention and priority data (if the right of priority is claimed):

(ⅱ) a Korean translation of the description, claims, text matter of drawings and abstract of the international application as filed;

(ⅲ) drawing(s), if they contain translated text matter, and

(ⅳ) a power of attorney, if necessary.

・PCTの韓国国内移行時には、(1)書誌的事項を記載した願書、(2)明細書などの韓国語翻訳文、(3)図面(翻訳個所がある場合)、および委任状(POA)を提出する。


If any amendment to the international application has been added with the International Bureau of WIPO or with the International Preliminary Examining Authority during the international phase, a Korean translation of the amendment should also be submitted at the time of entering into the national phase in the Republic of Korea.

・19条補正、34条補正が行なわれた場合は、それらの翻訳文を国内移行時に提出する。


According to patent practice in the Republic of Korea, the national phase must be entered with an exact Korean translation of the original international application as initially filed. Therefore, an amendment which has not been formally effected during the international phase cannot be filed at the time of entering into the national phase. It can, however, be submitted at a later time, after national fees have been paid, a translation of the application has been submitted and the relevant date (31 months from prior date or the date of the request for an examination, whichever occurs first.) has passed.

・国際出願の忠実な再現による翻訳文の提出が必要。国際段階で補正されなかった事項に関して、国内移行時の翻訳の段階で補正することはできない(この点、欧米諸国では結構緩い)。もちろん、韓国国内に係属した後に補正を行なうことはできる。

・relevant date(基準日。日本で言う「国内処理基準時」):原則優先日から31か月経過した日。審査請求が行なわれた場合はその日。


【参考】改正前の韓国特許法第201条
(翻訳文提出期間は、優先日から30か月だった)
Article 201 Translation of International Patent Applications
(1) An applicant who has filed an international patent application in a foreign language shall submit to the Commissioner of the Korean Intellectual Property Office a Korean translation of the description, claim(s), textual matter of the drawing(s) and the abstract filed on the international filing date within two years and six months (referred to as "the domestic period for submitting documents") of the priority date as defined in Article 2(xi) of the Patent Cooperation Treaty (referred to as "the priority date"). However, when an applicant who has filed an international patent application in a foreign language amends the claim(s) under Article 19(1) of the Patent Cooperation Treaty, only the Korean translation of the amended claim(s) need be submitted.

【その他】
(1)7月8日に、韓国弁理士にお越し頂き、実務に関して情報交換を行ないます。韓国特許法に関して事前にメールなどで質問を頂けましたら、可能な限り韓国弁理士にインタビューしてご回答します。(私としては、「特許審査ハイウェイ」の現状などに興味があります。)
(2)受験生の皆様、弁理士試験の2次試験、お疲れ様でした。
(3)NM先生、FN先生、NT先生、NM先生、OM先生、MH先生、KM先生、SY先生、週末はゴルフさぼってすみませんでした・・m(__)m

椿特許事務所
[弁理士TY]
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