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一特許出願等が二以上の意匠登録出願に変更された場合の取扱い [意匠法の実務(Design Patent)]

以下、意匠審査便覧より抜粋。
(S先生に教えて頂いたので、忘れないようにメモ。本当に、意匠審査便覧は宝の山ですね。)

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意匠審査便覧
18.11
一特許出願又は一実用新案登録出願が二以上の意匠登録出願に変更された場合の取扱い

 複数の意匠を包含する一特許出願又は一実用新案登録出願は、これを二以上の意匠登録出願に変更することができる。この場合、それらの意匠登録出願の各々について出願日の遡及の認否を判断する。

(説明)

 出願の変更は、もとの出願と新たな出願とは内容的に同一性を有していることが必要であるが、保護対象の客体が異なることから一の発明又は一の考案に関連して複数の意匠の対象となる客体が特許出願又は実用新案登録出願に存在していることがある。

 このような複数の意匠を包含するもとの出願の変更については、意匠法において対象となる客体のすべてが保護されるものであり、その客体たる意匠が複数存在している場合、分割の手続を経過するまでもなく可能であると解するか、変更すると同時に分割が行われた(分割の手続を省略した)と解するかに相違があるとしても、結果的には二以上の意匠登録出願とすることができる。
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【日誌】

M先生が事務所にいらして、雑談がてら、ある知的財産裁判の判決のことについてお話し頂く。不勉強でしたので話の価値がわからず、ふむふむと聞いた上で後で調べると、・・・これだったか!もっと詳しく聞いておけばよかったと後悔。M先生すみません、是非また今度詳しく教えて下さい。

大阪・北新地へ向かうM先生とは別に、筆者は節分の豆撒きのため職場から真っ直ぐ帰宅。
去年のブログにも書いていましたが、北新地の節分は賑やかで楽しいものです。↓興味ある方、来年行きましょう。
http://tsubakipat.blog.so-net.ne.jp/2010-02-04

なお、ブログで書いていた地裁判決に関しては、大阪高裁控訴審の判決が出されています(平成20年(ネ)第2836号商標権侵害差止等請求控訴事件)。念のため。


椿特許事務所
弁理士TY

意匠の類比判断(平成20年(ワ)第1089号意匠権侵害差止等請求事件) [意匠法の実務(Design Patent)]

・・・・・

(2)対比

ア 意匠の類似範囲

意匠の類否の判断は,当該意匠に係る物品の看者となる取引者,需要者において,視覚を通じて最も注意を惹かれる部分である要部を対象となる意匠から抽出した上で,登録意匠と被告意匠とを対比して,要部における共通点及び差異点をそれぞれ検討し,全体として,美感を共通にするか否かを基本として行うべきものである。そして,上記の判断に当たっては,当該意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するなどして,これを検討するのが相当である。

イ 公知意匠等

本件意匠の出願時点で公知であった衣料用ハンガーの意匠として,証拠(乙1~3)によれば・・・・
・・(中略)・・

ウ 本件意匠の要部

本件意匠は,その意匠に係る物品が衣料用ハンガーであり,通常の使用時において,衣服を吊り下げるときには,必然的にハンガーと向き合ってその正面側ないし背面側を見ることになることからすれば,正面側ないし背面側から見た外観の全体が看者である利用者の注意を惹くものであるというべきである。

原告は,本件意匠の平面側において1本のワイヤーがループ状になり,略直線状の肩支持部の先端に連なり,ワイヤー間隔が先端に向かって広がっていき,最先端で丸まっているとのハンガー本体のワイヤーの形状についても,注意が惹かれるものであると主張する。

しかしながら,ハンガーの利用者が通常の使用時において,ハンガーの平面側の形状に着目するとは認め難いこと,原告の主張する上記平面側におけるハンガー本体のループ状の形状は,いずれも乙1及び2意匠に表れていることから,本件意匠の平面側の形状が利用者の注意を惹くものと認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。

また,原告は,首部に懸装された半円状の薄板を要部でないと主張し,仮に,これが要部であるとすれば,衣料用ハンガーの製品にこのような薄板を付加して侵害を回避できることになって不当であるなどと主張する。
しかしながら,衣料用ハンガーにおいて,上記のとおり,正面側ないし背面側から見た外観の全体に注意が惹かれるのであり,登録意匠において,首部に薄板の外観を伴っている以上,実際にその薄板がブランド名の表示の機能を果たすとしても,薄板を含む正面側ないし背面側から見た外観全体の美感を問題とすべきであることに変わりはない。そもそも,原告の主張する意匠権の侵害回避のために薄板を付加するような事態というのは,当該登録意匠が,本件意匠と異なり,薄板のない構成態様である場合のことである上,このような場合に対象製品が付加工作により意匠権侵害を免れることになるか否かは,対象製品の薄板の形状を含む外観次第というべきであるから,原告の上記主張は,本件事案の反論として失当である。

以上によれば,本件意匠の要部については,正面側ないし背面側から見た吊部及びハンガー本体の形状であって,吊部については,フック部が正面側において円周の左下部が中心角約90度にわたって開放された円弧状をなし,吊下軸部がフック部の最下端に連なり,軸支持部を挿通し,軸支持部が円筒状でその円筒の内部で吊下軸部を支持し,その円筒の外部下端でハンガー本体のワイヤー状の線に前後から挟まれて結合しており,ハンガー本体については,ワイヤー状の線からなる首部が上部に台形状に突出しており,首部に半円状の薄板が懸装され,首部の端から肩支持部に直線状に連なり,肩支持部に連なって先端部が下方に折り曲げたように延在する短い直線状である点であるものと認められる。

・・・(中略)・・・

オ まとめ

上記エの本件意匠と被告意匠との差異点のうち,本件意匠では,首部の正面側の上辺のワイヤー状の線に半円状の薄板が取り付けられているのに対し,被告意匠において,首部5の正面側に本件意匠のような薄板が取り付けられていないという点において,被告意匠は,看者に対して本件意匠と異なる美感を与えるものというべきである。

そして,上記エの本件意匠と被告意匠との共通点のうち,吊部において,フック部及び吊下軸部を備え,ハンガー本体において,首部,肩支持部,先端部を備え,首部が中央に位置して上部に突出し,肩支持部が首部の両側に連なって斜め下方向に直線状に延在し,先端部が肩支持部に連なって肩支持部を下方に折り曲げたように延在する直線状であるとの基本的構成態様は,乙1ないし4意匠にも共通してみられる形状であること,首部が上部に台形状に突出しているとの形状は,乙3意匠にもみられる形状であること,吊部における円筒状の軸支持部は,ハンガー本体の全体の大きさと対比して,特に際立つ存在ではなく,また,その形状が乙4意匠にもみられるものであることに照らすと,上記の共通点は,上記の首部の薄板が欠如するとの差異点を凌駕するほどの影響を看者に及ぼすものとみることはできない。

その余の共通点についても,上記の差異点を凌駕するに足るものということはできない。

以上のとおりであるから,本件意匠と被告意匠とは,相互の共通点の存在にかかわらず,全体として,看者に対して異なる美感を与えるものであると認められる。

【登録意匠】
登録意匠.JPG

【イ号製品】
イ号製品.JPG

【メモ(現行意匠法)】

(登録意匠の範囲等)

第二十四条  登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。

2  登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。



椿特許事務所
弁理士TY

新規性喪失から出願までの第三者の公開行為について [意匠法の実務(Design Patent)]

審査便覧10.37
意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間になされた公開行為についての取扱い

1.意匠登録を受ける権利を有する者が、意匠登録出願前に意匠法第3条第1項第1号又は第2号の規定に該当するに至った意匠を複数回に亘って公開した場合には、その意匠が最先の公開について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるものであれば、第2回以降の公開によっても、その意匠は意匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至らなかったものとする。

2.意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間に第三者が「該当するに至った意匠」と同一の意匠を公開した場合には、その意匠は第三者の公開によって意匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当したものとする。
 ただし、第三者の公開が「該当するに至った意匠」の公開に基づくことが明らかなとき(注)はこの限りでない。

 (注)「第三者の公開が該当するに至った意匠の公開に基づくことが明らかなとき」とは、例えば「展示会の紹介記事」のようなことをいう。

(説明)
 意匠法第4条第2項に規定する「前条第1項第1号又は第2号に該当するに至った」意匠とは、意匠登録を受ける権利を有する者の行為により初めて公開された意匠ということを意味し、その意匠について「同項第1号又は第2号に該当するに至らなかったものとみなす」ということは、前記行為によって初めて公開された意匠について、その公開の日から6月以内にその者が出願をすると共に意匠法第4条第3項の手続をしたときに限り、新規性を喪失するに至らなかったものとみなすものである。

 そして、意匠法第4条第2項は、意匠登録を受ける権利を有する者の公開行為に何等制限を設けず、意匠に係る物品を製造し販売する等、第2回以降の公開について意匠登録出願人自身では律し切れない場合も例外事由とするものであるから、前記公開行為によって初めて公開された意匠がその公開に基づいて再度公開される限り、たとえそれが第三者の公開行為によるものであっても、そのことによって当該擬制が否定されることはないと解される。

 しかし、意匠法第4条第2項は、意匠の登録要件の判断を最先の公開時に行うとするものではなく、意匠登録を受ける権利を有する者(原始的には創作者)が、当該権利の発生原因たる意匠の創作に基づいて、意匠登録出願前にその創作に係る意匠を公開することを許容するに止まるから、第三者が別個に同一の意匠を創作し公開した場合についてまで、その意匠が新規性を喪失しないとするものではない。

 したがって、本文のとおり取り扱うものとする。


【メモ】
・自己の行為に基づく新規性喪失について例外適用を受ける時、当該新規性喪失から出願までの間にあった公開行為について規定する。それが自己の行為(および自己の行為に基づいて、他人が「展示会の紹介記事」などでその意匠を公開した場合など)であれば、依然として意匠登録を受けうるが、第三者が別個に同一の意匠を創作し公開した場合であれば、意匠登録を受けることができなくなる。

・また上記審査便覧では、第三者が「同一」の意匠を公開した場合が規定されているのみであり、「類似の意匠」を公開した場合は規定されていない点に注意するべきである。

・すなわち、新規性喪失から出願までには、6ヶ月の猶予期間(grace period)が認められるが、出願を急いだ方がよいことには変わりはない。

椿特許事務所
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意匠・新規性喪失(公知)を証明するための事実 [意匠法の実務(Design Patent)]

審査便覧10.35

意匠登録を受ける権利を有する者が公知にした場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実

実施等により公知になった意匠について下記の事実が意匠登録出願の日から30日以内に提出された「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要がある。

なお、意匠が公知になる態様は、意匠の実施、即ち意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をすることの外、意匠を記載した図面、意匠を現わした写真、若しくはひな形等の展示又はテレビジョン放送による放映等多様であるため、下記には代表例のみを示す。


1.展示(展示会・見本市・博覧会・新製品ショウ・その他)の場合
① 展示会名
② 主催者名
③ 開催日
④ 開催場所
⑤ 出品者名(公開者名)(→10.34)
⑥ 出品(発表)されたもの

2.販売の場合
① 販売日
② 販売場所
③ 販売者名(→10.34)
④ 販売されたもの

3.映像による場合
(1)テレビジョン放送による放映
① 放映番組又は広告名
② 放映者
③ 放映日
④ 放送局
⑤ 発表者名(→10.34)
⑥ 放映されたもの
(2)その他の映像
(1)に準ずる。

4.インターネットによる場合

①「証明する書面」に記載された意匠のインターネット上での公開が、公開時にその意匠について「意匠登録を受ける権利を有する者」の行為に起因した事実

②「証明する書面」に記載された意匠が公衆に利用可能な意匠である事実

③「証明する書面」に記載された意匠が掲載されているホームページの存在の事実
例えば、当該ホームページのトップページのアドレス及び当該ページの印刷物等。この場合の「アドレス」とは、URL(Uniform Resource Locator の略)という表記方法で表記された、インターネットのサービスの所在地を指す。一般にhttp://www.xxx.or.jpのように表記される。

④「証明する書面」に記載された意匠が掲載されているページの存在の事実(注1)
例えば、当該ページのアドレス及び当該ページの印刷物等。

⑤「証明する書面」に記載された意匠の掲載日時(注2)(当該意匠に公衆がアクセス可能となった日時)
例えば、当該意匠の掲載日時が表示された当該ページの印刷物等。
なお、出願人は、その情報に関して掲載、保全等に権限又は責任を有する者による証明書類等についても「証明する書面」として提出することが望ましい。

(注1) インターネットにのせられた意匠は、不特定の者がアクセス可能な意匠であり、頒布された刊行物に記載された意匠と同様の情報伝播力を有するので、通常、公衆に利用可能な意匠である。ホームページへのアクセスにパスワードが必要であったり、アクセスが有料である場合でも、その意匠がインターネットにのせられており、その意匠の存在及び存在場所を公衆が知ることができ、かつ不特定の者がアクセス可能であれば、公衆に利用可能な意匠である。

(1)公衆に利用可能な意匠であるものの例
① 「サーチ(検索)エンジン」(インターネット上で目的とするサイトを探すためにデータベース的な役割を果たすサイト)に登録されており検索可能であるもの又はその意匠の存在及び存在場所を公衆が知ることができる状態にあるもの(例えば、関連ある学術団体やニュース等からリンクされているもの又はアドレスが新聞や雑誌等の公衆への情
報伝達手段にのっているもの)

② パスワードが必要なものにおいては、パスワードを入手することのみで不特定の者がアクセス可能であるもの(この場合には、パスワードを手に入れることが有料かどうかは問わず、誰でも何らかの手続を踏むことで差別無くパスワードを手に入れてアクセスできるようになるホームページであれば公衆に利用可能な意匠である。)

③ 有料のホームページにおいては、料金を支払うことのみで不特定の者がアクセス可能であるもの(この場合には、誰でも料金を支払うことのみで差別無くアクセスできるようになるホームページであれば公衆に利用可能な意匠である。)

(2)公衆に利用可能な意匠とは言い難いものの例
インターネットにのせられていても、次に該当するものは公衆に利用可能な意匠とは言い難い。

① インターネットにのせられているが、アドレスが公開されていないために、偶然を除いてはアクセスできないもの

② 意匠にアクセス可能な者が、特定の団体・企業の構成員等に制限されており、かつ、当該意匠が部外秘の扱いとなっているもの(例えば、社員のみが利用可能な社内システム等)

③ 意匠の内容に通常解読できない暗号化がされているもの(有料、無料を問わず、何らかの手段により誰でも暗号解読のためのツールを入手できる場合を除く。)

④ 公衆がその意匠を見るのに充分なだけの間公開されていない場合(例えば、短時間だけインターネット上で公開されたもの)

(注2)インターネットにのせられた意匠は改変が容易であることから、「証明する書面」に記載された意匠が当該ページに表示されている掲載日時にその内容のとおりに掲載されていたかどうかが常に問われる。その事実について肯認し得る程度に証明(参考判決参照)されていない場合には、その公開意匠について意4条2項の規定の適用は認めない。
なお、その場合に、出願人は「証明する書面」の範囲内で、その事実の存在につき心証を得ることのできる資料を補充することができ(同様な運用として意匠審査便覧10.33 参照)、それによって先の事実が肯認し得る程度に証明された場合には、その公開意匠について意4条2項の規定の適用を受けることができる。

参考判決:東京高裁平成4年(ラ)第19号「自動車用ホイール」
「意匠が右条項(意4条2項)に規定する意匠であることを、意匠登録出願人自身が作成した書面のみで認定することは、一般には客観性が担保されないため相当ではないが、だからといって、右事項が第三者の作成した書面のみによって直接的に証明されなければならないと解するのは相当でなく、意匠登録出願人自身が作成した書面が提出されている場合には、これと第三者が作成した書面を総合的に判断して、右事項が肯認し得る程度に証明されていれば足りるものと解するのが相当である。」

(説明)
意匠法第4条第2項の規定の適用を認めるには、10.30に掲げた要件の全てが証明されていなければならない。そして、意匠法第4条第3項の規定によると、出願人に対し、意匠登録出願の日から30日以内に「証明する書面」を提出する義務を課し、これにより上記要件を証明させることとしている。しかし、この要件の中には、例えば「意匠登録出願に係る意匠と公開された意匠との同一性の判断」のような審査官の実体的判断に任されている部分もあり、又意匠の創作の時点から公知に至る迄には出願人にとって短期間のうちに証明することが困難であろうと思われる部分もある。そこで、前記要件について「事実である」と審査官が判断するために最小限必要であり、かつ出願人にとっても短期間に立証することが可能であろう事実については、出願人が「証明する書面」によって明示すると共に証明する必要があることとした。

上記事実が「証明する書面」によって証明されれば、その事実に基づいて審査官が実体的判断をすることによって10.30に掲げた要件について事実認定の判断が可能となるものである。


【日誌】

弁理士F先生に、なんば宗右衛門町のEという店でご馳走になる。F先生にお会いするのはしばらくぶりなのですが、髪が短くなり、髭もメガネもなくなっており、最初、別人かと思いました(niceイメチェンです)。

Mさん、Kさんと、なんば神座(かむくら)道頓堀店のカウンターに並んでラーメンを食べる。金龍ラーメンによく行くのだが、神座も素晴らしい(ラーメンは、醤油味のもつ鍋のスープに若干似たスープか?と思う)。
その日、道頓堀に「くいだおれ太郎」はいなかった。

椿特許事務所
弁理士TY

新規性喪失の例外の適用の手続き [意匠法の実務(Design Patent)]

(意匠の新規性の喪失の例外)

第四条  意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

2  意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

3  前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。


【メモ】

・第4条第3項に関しては、H18改正により、「14日以内」が「30日以内」に変更された。出願前に意匠を公開するケースが増加しており、第三者からの証明書面を取得するのに時間がかかることを考慮したもの。

・公開された意匠と類似する意匠に関しても、新規性喪失の例外の適用により意匠登録を受けることができる(1項、2項)。

・以下の、意匠審査便覧の記載は実務の上で重要。

<10 出願諸手続>
10.30 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるために必要な要件
10.30.01 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として内外国特許公報等が提出された場合の取扱い
10.31 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための手続
10.32 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」についての取扱い
10.33 意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として、出願人自らが作成した証明書等が提出された場合の取扱い
10.34 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための、「公開者」が「意匠登録を受ける権利を有する者」であることの証明
10.35 意匠登録を受ける権利を有する者が公知にした場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実
10.36 意匠登録を受ける権利を有する者が刊行物に記載した場合における意匠法第4条第3項の「証明する書面」によって明示されると共に証明される必要のある事実
10.37 意匠法第4条第2項の「該当するに至った日」と意匠登録出願の間になされた公開行為についての取扱い


・一部重要な点を以下に引用する。先日O先生の講義で習ったが、10.33は特に実質的な期間延長を可能とするものであり、大変に役立つ。(O先生、ありがとうございました。)


・審査便覧 10.31
意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための手続

意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるためには次の手続がなされていなければならない。

1.その旨を記載した書面が意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されているか(意4条3項) 、あるいは願書にその旨が記載されていなければならない(意施19条2項[準]特施27条の4)。
なお、電子情報処理組織を使用して手続を行う場合には、その旨を記載した書面の提出に代えて、当該意匠登録出願の願書に「【特記事項】」の欄を設けて「意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願」と記載しなければならない。(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則12条)

2.その意匠登録出願の日から30日以内に、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠が意匠法第4条第2項の規定の適用を受けることができる意匠であることを「証明する書面」が提出されていなければならない(意4条3項)。
なお、「証明する書面」を提出するときは、意匠法施行規則様式第1に規定された「新規性の喪失の例外証明書提出書」を添付しなければならない(意施1条)。

1又は2のいずれかがなされていない場合には、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けることができない。


・10.32
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」についての取扱い

 いわゆる「証明書」に限らず、それ以外の「書面による証拠」も「証明する書面」として取り扱うこととする。
(説明)
 一般に「証明書」とは、ある事実の存否について確信を抱かせる挙証をいうものであるが意匠法第4条第3項の「証明する書面」については、その内容、形式共に他に何ら法定されていない。そのため、提出されてくる「証明する書面」の内容、形式は種々多様に亘ることが想定される。
 そこで、ここにいう「証明する書面」には、いわゆる「証明書」は勿論その他刊行物等の書面による証拠を含んで解するものとする。


・10.33
意匠法第4条第3項にいう「証明する書面」として、出願人自らが作成した証書等が提出された場合の取扱い

 出願人自らが作成したいわゆる証明書(自らが証明者として署名したもの)(注)のみが提出された意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠については、同規定の適用を認めず審査を進める。
 ただし、「証明する書面」を補充することができるものとする。

(説明)
 意匠法第4条第3項の「証明する書面」として提出されたものであっても出願人自らが公開事実を証明する書面は、その事実の存在を客観的に判断し確信を抱かせる根拠としては十分なものとは言い難いものであるから、同条第3項にいう「証明する書面」として扱わないものとする。いわゆる「証明書」による場合は、本人以外の者の証明を必要とする。
 しかし、同法第4条第2項の規定において例外事由とされる公開行為は多岐にわたり、出願人が短期間に立証することに困難を伴うものがあると考えられるから、出願人自らが公開事実を証明する書面のみが提出されている場合には、「証明する書面」の範囲内で、その公開事実の存在につき心証を得ることのできる資料を補充する機会を与えることとした。
(注)宜誓書の形式のものも含む。

参考判決:東京高裁平成4年(ラ)第19号「自動車用ホイール」 判決日平成4年9月8日
 「意匠が右条項(意4条2項)に規定する意匠であることを、意匠登録出願人自身が作成した書面のみで認定することは、一般には客観性が担保されないため相当ではないが、だからといって、右事項が第三者の作成した書面のみによって直接的に証明されなければならないと解するのは相当でなく、意匠登録出願人自身が作成した書面が提出されている場合には、これと第三者が作成した書面を総合的に判断して、右事項が肯認し得る程度に証明されていれば足りるものと解するのが相当である。」


・10.34
意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるための、「公開者」が「意匠登録を受ける権利を有する者」であることの証明

 (1)意匠の創作者、公開者及び出願人のうち、公開者のみが相違する場合、(2)前記三者の全てが相違する場合,(3) 意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合若しくは公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合であっても、意匠法3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一でない場合又は同一性を有していない場合には、公開時において公開者が「意匠登録を受ける権利」の正当な承継人であること、若しくはその公開行為が承継人の意志・意向指示等に基づく行為であることが「証明する書面」(意4条3項)によって証明されていなければならない。

(説明)
 意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠にあっては「意匠登録を受ける権利を有する者が自ら公開行為をし、その者が意匠登録出願をする」こともその要件の一部である以上、公開者が公開時に、出願人が出願時にそれぞれ意匠登録を受ける権利を有する者であることが「証明する書面」によって証明されていなければならないものである。

 ところで、一般の意匠登録出願にあっては、出願人に対し、意匠登録を受ける正当な権利を有する者であることを、必ずしも証明させていない。これは、創作者及び出願人の名称を願書面に記載することを義務づけていることから、出願人は意匠登録を受ける正当な権利者であろうと推定した結果によるものであり、この推定を左右するような事情が生じた場合には、当然に両者の関係を証明させる必要がある(意施19条1項[準]特施5条)。

 また、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠について上記事情を考慮すると、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一又は同一性を有している場合には、意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合は勿論、公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合も、公開者が意匠登録を受ける正当な権利者であろうと推定することに不合理はない。

 しかし、(1)意匠の創作者、公開者及び出願人のうち、公開者のみが相違する場合、(2)前記三者の全てが相違する場合、(3)意匠の創作者、公開者及び出願人の三者が一致している場合若しくは公開者が意匠の創作者又は出願人のいずれかと一致している場合であっても、意匠法第3条第1項第1号又は同条同項第2号に該当するに至った意匠と出願された意匠とが同一でない場合又は同一性を有していない場合には、上記推定の働く余地は少ない。

 したがって、この場合に限って本文のように取り扱うこととする。


【日誌】

本日、「N」の懇親会へ。特にMさん(主役)、Kさんに会えるのが楽しみ。また、久しくお会いできていない方々にお会いできるのも楽しみにしています。

椿特許事務所
弁理士TY
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