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新規事項の判断に関する事例36 [国内法・国内判例など(JP:特許)]

新規事項の判断に関する事例36

出願当初の明細書等

発明の名称
杭圧入引抜機

特許請求の範囲
【請求項1】
 既設杭を挟持した状態で新たな杭を順次圧入して杭列を形成する本体と、前記杭列の進行方向と一致するように設定されたガイド面を有して前記本体に取り付けられ、前記ガイド面に沿って新たな杭の圧入を案内するガイド板とを備えている杭圧入引抜機。

補正後の明細書等

発明の名称
………………
特許請求の範囲
【請求項1】
 既設杭を挟持した状態で新たな杭を順次圧入して杭列を形成する本体と、この本体に取り付けられ、新たな杭の圧入を案内するガイド面を有するガイド板と、前記ガイド板に取り付けたレーザー発振器とを備え、前記杭列のラインの終端に配置されたターゲットにレーザー光が入射するように、前記ガイド板の本体に対する取り付け位置を選定可能としたことを特徴とする杭圧入引抜機。


発明の詳細な説明の抜粋
 ……………………………………………………………………
 この杭圧入引抜機の本体は、複数の既設杭Pを挟持する複数のクランプ1と、新たな鋼管杭POを圧入するチャック2とを備えており、更に、本体には、ガイド板10が取り付けられている。
 このガイド板10は新たな杭POを圧入する際に案内を行うものであり、ガイド板10の一方の側面がガイド面11となっている。ガイド面11は施工すべき杭列のラインの進行方向に合わせて設定されるものであり、新たな杭POはこのガイド面11を摺動しながら地盤に圧入される。
 また、上記ガイド板10上の先端部分には、レーザー発振器16が取り付けられており、そのレーザー発振器16からレーザー光が出射する。符号17は施工すべき杭列のラインであり、このライン17の終端にはレーザー光を受光する受光器等のターゲット18が配置されている。
 かかる本実施例では、上記レーザー発振器16から出射したレーザー光がターゲット18に入射するように、ガイド板10の本体に対する取り付け位置を選定する。これによりガイド板10が杭列のライン17と一致するため、そのガイド面11が杭P及びPOを案内しながら圧入できる。
 ……………………………………………………………………
 レーザー発振器から出射されるレーザー光線は直進する特性を有するので、この特性を利用することにより、ガイド板を常に杭列のラインに一致させて杭圧入の法線出しを、簡単かつ精度良く行うことができる。
 ……………………………………………………………………


[結論]
 補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

[説明]
 当初明細書には、「上記ガイド板10上の先端部には、レーザー発振器16が取り付けられており」という記載があるが、他方で、「レーザー発振器から出射されるレーザー光線は直進する特性を有するので、この特性を利用することにより、ガイド板を常に杭列のラインに一致させて杭圧入の法線出しを、簡単かつ精度良く行うことができる。」と記載されている。そして、「レーザー光線は直進する特性を有するので、この特性を利用する」という説明と、これにより「ガイド板を常に杭列のラインに一致させて杭圧入の法線出しを、簡単かつ精度良く行なうことができる」という発明の技術上の意義からみて、レーザー発振器は、ガイド板上の先端に取り付けられている必要はないことが当業者に当然に理解される。そうすると、当初明細書等には、レーザー発振器の取り付け位置の限定のないものが記載されていたといえる。

 したがって、この補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。

 なお、上記の例とは異なって、レーザー発振器の取り付け位置を、例えば「ガイド板上の後端」とする補正をしようとする場合は、当初明細書等には取り付け位置をこのように特定(選択)することは記載されておらず、このように特定(選択)することによって、当初明細書等に記載されていなかった事項が個別化されることになるので、補正は許されない。


【個人メモ】

下位概念の実施例から、補正により上位概念の発明特定事項(または発明)を記載するときの注意点を述べる。
この場合の「当初明細書等に記載した事項」とは、「発明特定事項」とも「技術的事項(または技術的思想、発明)」とも読める。

椿特許事務所
弁理士TY
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